学術論文

「職務の特性と職務態度等との関係における専門性意識の役割」『青山経営論集』第57巻第2号 pp.219-241

 PXL_20220913_075805262.MPジョブ型雇用の広がりによって、自身の専門性を確立し、それを高めようという意識が多くの人に広がってきたと考えられます。しかし、専門性といっても組織で働く多くの人にとっては毎日の職場での職務を無視する訳にはいきません。そこで本論文では、働く人の職務と専門性意識との関係を実証的に分析しました。具体的には、さまざまな職務の特性が専門性意識にどのような影響を与えるのか、さらに、その関係が本人の職務態度やキャリア発達にどのような影響を与えるのかについてです。それによって、組織や上司が従業員の職務に対しどのようにマネジメントすべきかについても検討していました。その結果、第一に、働く人の職務の特性を示す職務充実度の高さと職務の学習価値の高さは、専門性に対するコミットメントの高さに寄与していました。第二に、専門性コミットメントの高さは、仕事やキャリアへの満足感、将来のキャリアへの展望、組織に雇用される能力を示すエンプロイアビリティの高さに寄与していました。第三に、職務充実度の高さと職務の学習価値の高さは、専門性コミットメントを高めることを通して、仕事やキャリアへの満足感、将来のキャリアへの展望、組織に雇用される能力を示すエンプロイアビリティの高さに寄与していました。
 以上から、従業員の専門性に対する意識を向上させることの重要性が示されました。組織や管理職としては、部署内での職務の割り当てや配置転換を行う際、部下一人ひとりの専門性の蓄積を妨げないようなジョブローテーションやきめ細かな運用上の配慮が必要です。言い換えると、組織内で何回か専門分野が異なる部署や部門に異動しても、最終的に本人が今後長期的に専門性を深めたい部門(母港)に戻ってくることを意味する「キャリア上の母港」を確立していく必要性も示されたといえます。

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