学術論文

「労働観に影響をおよぼすパーソナリティ関係要因と生活意識要因について」『産業・組織心理学研究』(産業・組織心理学会)第7巻第1号pp.3-14<査読済み>

 働く人が労働に関して何を重視するかを示す労働観は、個人のパーソナリティにおいて変わりにくいと考えられてきました。しかし、近年ゆとりを求める人々の意識の変化や、女性の職場への進出等、労働環境や企業の人的資源管理を取り巻く外的環境の変化によって影響を受けていると考えられます。本論文では労働観として、仕事中心の労働観を取り上げて検討しました。これは、対人関係よりも仕事中心の労働、職場生活を重視し、仕事に没頭しているときに最も生きがいを感じたり、一旦、選んだ仕事は定年まで続けるべき、と考えるような労働観です。また、終身雇用、年功処遇の前提のもと、わが国の高度経済成長を支えてきた、会社人間的な成年男子に典型的にみられたと考えられる労働観です。 首都圏に居住する60才未満の男女を対象にした質問票調査の結果、所属集団に対する連帯意識の強さ、自尊心の強さおよびゆとりを求めるライフスタイルが仕事中心の労働観に影響していることが明らかにされました。組織の人的資源管理の観点からは、持ち家補助などの長期的な福利厚生施策にみられるように、従業員に将来の堅実な生活設計意識をもたせるような施策の実施が、仕事中心の労働観につながることが示されました。
 働く人の意識やそれと組織のマネジメントとの関係などの問題に興味がある方は、是非お読み下さい。

 

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