学術論文

「企業文化と従業員のキャリア・プラトー現象との関係について」『日本労務学会誌』第1巻第2号 pp.35-44<査読済み>

 本論文は企業文化と、組織従業員の昇進の遅れ・停滞を意味するキャリア・プラトー現象との関係を検討しました。企業文化は、社風や組織風土と類似したもので、従業員の活動を左右する組織内に共有された価値、規範、行動様式などを指します。プラトー現象は組織の職位に関する現象である以上、総合職制度など組織の人的資源管理の個々の施策と密接に関係しています。しかし、個々の施策は相互に強い関連があるため、人的資源管理とプラトー現象との関係を検討するにあたっては、複数の施策による複合的な影響や個々の施策の背後にある組織全体の信念、規範や価値すなわち企業文化を考慮する必要があります。本稿では、表層的レベルの昇進に関する企業文化を実際の組織の雇用・昇進慣行から、終身雇用・早期エリート選抜型、終身雇用・競争継続型などに分類しました。また、深層レベルの昇進に関する企業文化を、従業員の所属組織の管理職選抜システムに対する認知の観点から、早期エリート選抜型、同期横並び型などに分類しました。
 大企業の課長職を対象とした質問票調査、表層レベルの雇用・昇進慣行上の類型別に課長の昇進可能性を比較しましたが、差はみられませんでし。プラトー現象は雇用・昇進慣行上の類型の差異に関わらず、どの組織にも一様にみられる現象であることが示されました。次に、深層レベルの管理職選抜システムに対する認知別に課長の昇進可能性を比較した結果、自社が早期エリート選抜型であるとする課長は、同期横並び型または競争継続型とする課長より現在の職位在任期間が長いこと(客観的なプラトー化を示す)がわかりました。以上から、従業員の認知による深層レベルの企業文化のプラトー現象への影響の重要性が示されました。個別の人的資源管理施策とプラトー現象との関係を検討するにあたっては、施策が従業員側の意識である管理職選抜システムの認知に関する変数を介してプラトー現象に影響することを考慮する必要が示唆されました。
 企業の人事の方々や組織でのキャリア発達に関心がある方々に是非お読みいただきたいと思います。

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