学術論文

「転職理由からみた中高年管理職の組織間キャリアの研究―早期退職優遇制度を中心として」『青山経営論集』第36巻第4号 pp.41-61

 リストラによる雇用調整や転職率の高まりに対応して、複数の組織を渡り歩くことによって形成されるキャリアを意味する組織間キャリアが注目されるようになってきました。つまり、転職、出向や転籍によって多くの働く人々が組織間キャリアに移行し、今後も組織間キャリアを念頭に置いて自己のキャリア計画を設定する必要性が高まってくるといえます。また、雇用調整せざるを得なくなった送出し側の企業でもスムーズな転職を実現するために、転職者の組織間キャリアへの配慮が重要になってきました。さらに、必要な人材を受け入れたい中堅・中小企業でも、採用者の組織間キャリアの発達に資するような人的資源管理施策が要請されるといえます。働く人の組織間キャリアを考える上で重要な点は、その出発点である組織内キャリアから組織間キャリアへの移行、具体的には転職に至る動機づけ的な意味をもつ転職理由でしょう。本論文は、著者も参加し、平成11年度厚生労働省の委託を受け(財)雇用情報センターが実施した「中高年管理職層の企業間移動に関する調査」の結果を通して、早期退職優遇制度を適用して転職した人々の特徴を転職理由の観点から分析しました。
 分析の結果、早期退職優遇制度を適用して転職した中高年管理職層は、これ以外の転職理由と比較して、年齢が高く、民間の人材紹介会社を求職ルートとして多く利用してきたが入社のきっかけにはならず、それまで転職経験がなく、現在の組織における労働条件満足度が低いことが明らかにされました。彼らは、年齢が高いという点で一般に労働市場における位置づけが不利であり、民間の人材紹介会社を多く利用する割には決定率は高くありませんでした。また、転職経験のなさはこれまで所属組織外での評価にさらされた経験が乏しいことを意味します。すなわち、早期退職優遇制度適用者は、公的な機関による転職援助の必要性が高いグループであるといえます。働く人のキャリアや転職、出向などの問題に関心がある方は、是非以下をお読み下さい。

本文へ→転職理由からみた中高年管理職の組織間キャリアの研究―早期退職優遇制度を中心として.pdf

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