学術論文

「組織従業員のキャリア発達と組織コミットメントとの関係」『経営論集』(明治大学)第51巻第3号 pp.131-153

 本論文では、従業員のキャリア発達と彼らの所属組織に対するコミットメントとの関係を検討しました。
 終身雇用と年功処遇の崩壊により、組織と従業員との関係が希薄化し、短期化してきています。そこで重要となるのは、現在の所属組織で自己の能力の増大や専門的な知識・技能の獲得がみられるかどうか、つまりキャリアが発達するかどうかでしょう。たとえば、多くの勤労者が、市場価値の高い専門的な技能が身につくような組織には長くとどまりたいと感じるでしょう。そこで、本稿では、勤労者のキャリア発達モデルとして体系的と考えられるシャインの3次元モデルに基づいて、キャリア発達と組織に対するコミットメント(愛社心など)との関係を分析しました。
 その結果、組織コミットメントに最も強い影響を与えるのは垂直方向への発達、つまりタテのキャリアの発達であることが明らかにされました。特に、将来の昇進可能性の高さやこれまでの昇進に対する満足感などの主観的要因の影響が大きく、組織における昇進・昇格の重要性が指摘されました。次いで、水平方向への発達、つまりヨコのキャリアの発達では、これまで最も長く経験してきた職種と将来キャリアの柱としたい職種との一致や仕事の挑戦性の高さが組織コミットメントに影響していました。最後に、中心方向への発達、つまり職務の重要性の増大も同様に、組織コミットメントに影響しており、シャインの3次元モデルに基づくキャリア発達が組織と従業員の関係性に影響していることが確認されました。働く人のキャリアの問題に関心がある多くの人々にお読みいただきたいと思います。

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