著書(共著・分担執筆)

『勤労者の世代別退職金制度意識と今後の退職金のあり方調査研究報告書』((財)雇用情報センター)

「第2章 勤労者、退職金受給者および企業からみた退職金―アンケート調査の結果を踏まえて」(pp.32-60)を執筆しました。

 成果主義や雇用の流動化の広がりによって近年企業の退職金制度は大きく変貌を遂げています。(財)雇用情報センターの実施したアンケート調査の結果を踏まえてその変貌の一端を分析しました。
 第1に、勤労者の退職金制度に対する意識を分析しました。その結果、個人別の差異が大きく明確な世代間格差がみられなかった満足度を除けば、退職金に対する意識には一定の世代差がみられました。報酬の時価主義志向のような比較的新しい意識は、より若い層とくに20歳代に顕著にみられ、税制のメリット意識のような退職金受取に実際に関連した意識は、中高年層(とくに40歳代)で明確にみられました。退職後の生活に密接に関係する退職金制度は個人のライフプランと関係する重要なものです。企業の人的資源管理においても、従業員の意識の世代差に十分配慮した施策の展開が必要といえます。
 第2に、退職後の生活に影響をおよぼす要因の観点から、退職金受給者からみた退職金に対する意識を分析しました。その結果、現在の生活の余裕度に大きく寄与しているのは、用途の自由度の高さ、多様な収入源からの恒常的収入、配偶者の強力なサポート、一時金額の多さの4要因でした。特に一時金額の多さを除く要因には、退職に向けた勤労者の長期的なライフプランの設計が関係します。そしてその点については、企業の生涯生活設計プログラムなどによる在職中からの援助が有効であると考えられます。
 第3に、企業の立場からみた退職金制度を分析しました。その結果、企業業績の推移が人件費としての退職金制度に大きな影響を与え、総人件費抑制の方針が退職金制度に対してもみられました。また、特定の戦略や制度の導入、特に、成果主義に関するものが退職金制度に強い影響を与えていました。最後に、確定拠出年金のような新しい制度の導入に対しては現状ではかなりの企業属性の違いがみられ、今後の動向も注目されます。
 企業の退職管理や退職金制度に関心をおもちの多くの方々にお読みいただきたいと思います。
 

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