著書(共著・分担執筆)

『雇用の多様化にともなう企業の人的資源管理のあり方』((財)雇用振興協会:現(一社)SK総合住宅サービス協会)

 (財)雇用振興協会(現(一社)SK総合住宅サービス協会))の平成16・17年度調査研究事業(研究テーマ「非正規社員・派遣・契約社員の活用」)の成果を出版したものです。調査研究委員(コーディネーター)を務めさせて頂きました。本書のなかで、第4章 企業の人的資源管理と雇用の多様化との関係」(pp.109-118)、「第5章 企業の人的資源管理と正規従業員の態度との関係」(pp.119-142)、「第6章 企業の人的資源管理と非正規従業員の態度との関係―正規従業員との比較の観点から」(pp.143-156)を執筆しました。
 第4章では、非正規従業員比率の高い、すなわち雇用の多様化が進展している組織ではどのような人的資源管理が実施されているかを分析した結果、(1)正規従業員への登用制度を導入している、(2)時間的なシフト(配置)を希望に合わせて柔軟に変更しているなどの特徴をもっていることが明らかにされました。(1)と(2)は明らかに多様性管理のための施策と考えられます。
 第5章では、組織の人的資源管理戦略が正規従業員にどのように知覚され、従業員のキャリア発達に結びついているかを分析しました。その結果、人的資源管理戦略自体では、選抜的採用の職務満足へのポジティブな影響しかみられず、キャリア発達促進のためにはそれが従業員にどのように知覚されるかが重要であるかが明らかにされました。そして、人的資源管理の知覚は公平な処遇や雇用の保証など多くのものが職務満足にポジティブに影響していました。最後に、人的資源管理戦略→人的資源管理知覚→職務満足の関係においても、成果主義→公平処遇→高い職務満足および積極的教育訓練→適性配置→高い職務満足の関係が明らかにされ、成果主義的施策によってキャリア発達を促進しようとする場合、それが公平に行われるという知覚を伴うことが必要であるなどが見出されました。リテンション(定着)に対しも同様の結果が見られました。
 第6章では、第5章の正規従業員の結果と比較するために、非正規従業員を対象に同一の分析を行いました。その結果、人的資源管理戦略自体の職務満足への影響はみられず、人的資源管理の知覚は公平な処遇や情報の共有など多くのものが職務満足にポジティブに影響していました。さらに、人的資源管理戦略→人的資源管理知覚→職務満足の関係では、知覚と職務満足との間に一部影響がみられただけでした。全体として企業の人的資源管理は、非正規従業員の態度より正規従業員の態度の方により影響することが示されました。また、正規従業員では企業の人的資源管理戦略がかなりの程度従業員の知覚に影響していたのに対し、非正規従業員ではまったくその影響がみられませんでした。企業の人的資源管理がどちらかといえば正規従業員を主たる対象として設計されていることが多いことが関係しているかもしれません。企業で非正規従業員のマネジメントを考える場合、「量」すなわち人数としてだけで考える傾向があるといわれています。そうではなく、彼らを一人ひとり異なった価値観、能力、興味をもった対象としてとらえることが重要であるといえるでしょう。

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