非正規社員の増加や転職の増加し、現代は学業を終えて就職する人々が、全て一つの組織でその職業人生を終えたり、転勤と、より上位の管理職への昇進を繰り返す人生を目標とする時代ではなくなってきました。また、一つの組織を辞めても、その人の職業人生が終結するわけではなく、主婦の再就職の増加にみられるように、多くの人が職業人生を継続します。そのため、働く人は自らのキャリア意識によって、その職業人生が大きく左右される状況が生じています。本論文では、キャリア意識として、自分のキャリアや職業を重視する程度を示すキャリア・コミットメントを取り上げました。
そして、民間企業の正社員に対する質問票調査によって、個人属性、職務や職場の状況や本人の組織や仕事に対する意識がどのように影響するのかを分析しました。その結果、個人属性要因では、キャリア・コミットメントが高い群は、低い群に比べ、年齢が高く、勤続期間が長く、職位も上位者および管理職が多いのに加え、既婚者の比率が高いことが見出されました。また、職務・職場の状況要因と個人の意識要因において、職務が自己実現の機会に恵まれている、または職務の多様性が低いほど、生活において仕事の占める割合が高いほど、キャリア・コミットメントが高いことが明らかにされました。以上から、人的資源管理上の施策としては、従業員が自分の職務を、自己実現のための機会を十分にもったものだと感じるような職務設計などの必要性が示されました。
働く人の意識やそれと組織のマネジメントとの関係などの問題に興味がある方は、是非お読み下さい。
学術論文