本論文は、組織の人的資源管理施策と、従業員の昇進の停滞を意味するキャリア・プラトー現象との関係について研究しました。プラトー現象は、組織の職位に関する現象である以上、組織の個々の人的資源管理施策と密接に関係しています。そこで、組織の人的資源管理全体や、個々の人的資源管理制度のプラトー現象への影響を検討することによって、プラトーの発生を抑え、またその比率を低下させることをめざす施策の立案に資することを目的としました。以上を、大企業の課長を対象とした個人調査と課長が所属している組織の人事担当管理職に対する企業調査の結果によって分析しました。
その結果、プラトー現象の主観的側面を示す昇進可能性の知覚については以下の点が明らかにされました。すなわち、退職準備プログラムがなく、課長・部長クラスで逆転人事の慣習がある組織の課長の方が昇進可能性知覚が低いことがわかりました。しかし、それ以外の施策では差がみられませんでした。昇進可能性知覚は、昇進に関する個々の人的資源管理制度や慣習などとはあまり関係がないことが明らかにされました。
次に、プラトー現象の客観的側面を示す現職位在任期間の長さについては以下の点が明らかにされました。すなわち、早期退職優遇制度、昇進試験、昇格試験があり、課長昇進において実際に昇進試験の結果を重視している組織の課長は、課長としての現職位在任期間が長いことがわかりました。
以上の結果から、昇進に関係する人的資源管理施策のうち、プラトー現象と関係するものと関係しないものがあることが明らかにされたといえます。全体としては、従業員自身が自発的に参加する制度(早期退職優遇制)や、試験のように客観的に結果が明白になる制度の方がプラトー現象と関係が深い傾向がみられました。企業の人事部の方々や組織でのキャリア発達に関心がある方々は是非、以下をお読み下さい。
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