学術論文

「キャリア・プラトー現象と昇進に対する期待―期待理論の観点から」『青山経営論集』第36巻第3号 pp.1-21

 キャリア・プラトー現象(昇進の遅れ)は、現在、第二次ベビーブーム世代(1971-74年生まれ39-42歳)を中心に進行しているといわれます。この現象が高齢化や高学歴化の進展による不可避的なものだとすれば、現象自体が問題だというより、その進行が従業員のモチベーションや業績の低下につながることが問題でしょう。そこで本論文では、両者間に従業員のモチベーションを考え、プラトー現象がモチベーションを低下させ、モチベーションの低下が業績低下や退職を促進するという関係を想定しました。そして、モチベーション理論として最も整備されているといわれる期待理論に基づいて、大企業の課長職を対象とした質問票調査によって分析しました。期待理論とは、組織の従業員は努力をすることによって、特定の結果(昇進、昇給などの個人的報酬)をもたらす確率が高いと認知(期待)するほど、また、そのような結果が自分にとって望ましいものであると認知するほど、努力を傾けようとすると考えます。
 分析の結果、主観的なキャリア・プラトー化は、努力すれば昇進するという期待の低さ、努力すれば業績が向上するという期待の低さや、業績が向上すれば昇進するという期待の低さに影響しました。しかし、客観的なキャリア・プラトー化(現職位在任期間などで測定)は、明確な影響はみられませんでした。この結果から、明確な客観的基準によって、従業員のモチベーションをコントロールすることの困難性が明確にされました。そのため、人的資源管理上組織や上司がキャリア・プラトー現象を扱う場合は、明瞭で把握可能な客観的側面だけでなく主観的側面も考慮する必要があることが示されたといえます。働く人々の昇進やモチベーションの問題に関心がある方は是非以下をお読み下さい。
本文へ→キャリア・プラトー現象と昇進に対する期待―期待理論の観点から.pdf

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