現代は、女性のさらなる社会進出が求められています。しかし、男性と比較して短期的で、中断の可能性のある女性の場合、転職などキャリア上の決定や行動も男性と異なると考えられます。特に本発表では、対象として、看護職をとりあげました。看護職は慢性的人手不足と社会的要請の高まりから、再就職の受け皿が整備され、職業としては継続しやすいといえます。しかし、不規則勤務、夜勤など職務環境に問題があることが多く、また集団作業が中心で、人間関係の問題も生じやすいとえます。このように、看護職は社会的要請や個人的な専門職としての意識と、個人の実際のキャリア行動の間に葛藤、矛盾が生じやすい職業であると考えられます。より水準の高い看護や長期の職業継続に対する社会的要請の高い看護職のキャリア上の障害を明確にするためにも、そのキャリア上の決定や行動に関係する要因の検討は重要と考えられます。
女性の正看護師を対象にした質問票調査の結果、例えば、日常の職務改善をめざす仕事の質の向上行動に対して、キャリア目標を大切にするなどのキャリア意識や、生活全体において仕事を重視したいとする意識、さらに職務の内容、ミッションなどが明確であるなど、多くの要因が寄与していました。また、看護職という職業自体を辞めたいという意思には看護職に対するコミットメントが影響していたのに対し、病院(施設)を変わりたいという意思には看護職に対するコミットメントだけでなく、自分のキャリア目標に対するコミットメント、成長欲求、生活全体において仕事を重視したいとする意識など、多くのキャリア意識が影響していました。女性看護職の定着(リテンション)促進のためには、多くの人的資源管理上の施策を動員する必要性が示されました。
女性のキャリア意識やキャリア発達、さらにそれらに対する組織の援助の問題に興味がある方は、以下をお読み下さい。
日本応用心理学会第60回大会発表論文集, pp.286-287
学会発表