学術論文

「組織従業員のキャリア発達と組織間キャリア志向との関係」『青山経営論集』第37巻第2号 pp.29-51

 本論文では、従業員のキャリア発達と彼らの組織間キャリア志向との関係を検討しました。
 終身雇用と年功処遇の崩壊により、組織と従業員との関係が希薄化し、短期化してきています。そこで重要となるのは、現在の所属組織で自己の能力の増大や専門的な知識・技能の獲得がみられるかどうか、つまりキャリアが発達するかどうかでしょう。たとえば、多くの勤労者が、市場価値の高い専門的な技能が身につくような組織には長くとどまりたいと感じるでしょう。そこで、本稿では、勤労者のキャリア発達モデルとして体系的と考えられるシャインの3次元モデルに基づいて、キャリア発達と組織間キャリア志向との関係を分析しました。組織間キャリア志向とは、一つの組織内での組織内キャリアから複数の組織を渡り歩く組織間キャリアへの移行をどの程度志向しているかを示す主観的概念であり、すべての組織従業員がその高低に関わらずもっていると考えられます。また、転職の増加による雇用の流動化が進展し、組織間キャリア志向が高い人々が増えていることが想定されます。
 その結果、組織間キャリア志向に最も強い影響を与えるのは垂直方向への発達、つまりタテのキャリアの発達であることが明らかにされました。これには、職位などの客観的要因も将来の昇進可能性の高さやこれまでの昇進に対する満足感などの主観的要因もともにマイナスに影響しており、組織における昇進・昇格の重要性が指摘されました。次いで、水平方向への発達、つまりヨコのキャリアの発達では、これまで最も長く経験してきた職種と将来キャリアの柱としたい職種との一致や仕事の挑戦性の高さがマイナスに影響していました。しかし、中心方向への発達、つまり職務の重要性の増大は影響していませんでした。そのため、シャインの3次元モデルに基づくキャリア発達のうち、タテとヨコの2次元が組織間キャリア志向に影響していることが確認されました。
 働く人のキャリアの問題に関心がある方は、以下を是非お読み下さい。

本文へ→組織従業員のキャリア発達と組織間キャリア志向との関係.pdf

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