現代は、女性のさらなる社会進出が求められています。しかし、男性と比較して短期的で、中断の可能性のある女性の場合、キャリアに対する意識も男性と異なると考えられます。先行研究でも、男性の過去のキャリアに対する満足感や将来のキャリア上の目標に対するコミットメントが女性より高い結果がみられています。そこで、どのような要因が女性のキャリア意識に関係するかを検討することによって、女性従業員のキャリア意識を高め、定着促進などに結びつける人的資源管理上の施策案出に資すると考えられます。
女性の正看護師を対象にした質問票調査の結果、職務・職場の状況的要因では、現在の職務が自己の能力開発や自己実現に役立つと認知している場合、看護職としての現在の職業に高いコミットメントを示し、過去の自己のキャリアにも満足していました。つまり、女性看護職に対する施策として、自己の職務が能力開発や自己実現のための機会に恵まれていると感じさせるように職務を充実させていくことが、キャリア意識向上という形で重要と考えられます。
次に、個人的要因では、生活全体における仕事の占める割合の高い程、また職務を通して自己の成長を図ろうとする欲求の高い程、現在の職業に高いコミットメントを示し、将来のキャリア上の目標に対するコミットメントも高いことが見出されました。これらの結果から、基本的に仕事中心か、少なくとも仕事を大切にするような人や、職務を通して自己の成長を図ろうとする自己実現欲求の高い人の採用や、そのための教育の重要性が指摘されました。
女性のキャリア意識やキャリア発達、さらにそれらに対する組織の援助の問題に興味がある方は、以下をお読み下さい。
日本社会心理学会第34回大会発表論文集, pp.54-57
学会発表