「発達」という上昇的なポジティブな側面からのみ論じられることの多かった働く人のキャリア発達に、「発達の停滞」というネガティブな側面から光を当てたのがキャリア・プラトー(停滞)現象の研究です。近年の研究では、キャリア・プラトー現象を、所属組織で将来の昇進の可能性が低下することを示す階層プラトー現象と、長期間同様の職務に従事することでマンネリ化し自己の職務に挑戦性を感じられなくなった状態を示す内容プラトー現象の二つでとらえられています。また、専門職である看護師も、自分の職務や処遇などに満足感を得て働き続けるためには、キャリア・プラトー現象への組織的な対応が必要であると考えられます。そこで、本発表では、医療機関において急速に普及しつつある目標管理が看護師のキャリア・プラトー化に及ぼす影響を検討しました。目標管理とは組織全体や部署の目標と連動した、明確な業務上の目標を上司との話し合いによって設定し、目標の実行期間中上司の支援を受けながら、かつ一定期間ごとに上司との面談を行い、達成度を評価するものです。
臨床経験3年以上の看護師を対象とした質問票調査の結果、看護師の個人目標を達成するために組織や同僚からの支援があることや、病院や上司から活動時間の配慮、学習機会の提供、精神的支援を受けたことが内容プラトー化にネガティブに作用することなどが見出されました。つまり、上司による目標管理面接だけでなく、個人目標の達成のために組織における多様な支援の重要性が明らかにされました。
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日本産業カウンセリング学会第18回金沢大会発表論文集,pp.56-59(松下由美子、田中彰子、吉田文子、竹内久美子、杉本君代、雨宮久子各氏との共同発表)
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