働く人のエンプロイアビリティ(組織に雇用される可能性)に関する7回目の発表をしてきました。組織がリストラやM&A等の戦略を頻繁にとるようになり、雇用関係が安定・長期的なものからより柔軟・短期的なものへ変化してきました。それらを背景に、2005年前後以降、特にヨーロッパでエンプロイアビリティが再び注目されてきました。しかし、これまでの実証分析は、異なった時期に多様な対象を分析し、エンプロイアビリティの測定方法も異なっていたため、それらの結果をグローバルに応用することができませんでした。そこで今回の発表では、同時点で、同一の測定基準による国際比較を行うことで、エンプロイアビリティの位置づけの国際比較、つまりそれ自体及び構造に、国による違いがみられるかどうかの解明を目的としました。
日本とイギリスの正社員を対象とする質問票調査の結果、3つの点が明らかになりました。第1は、両国とも社員のエンプロイアビリティには、所属組織で評価され、雇用され続けるための能力を示す内的エンプロイアビリティと、他の組織に(同等以上の条件によって)転職できる能力を示す外的エンプロイアビリティの二次元から成っていました。第2は、日本は内的エンプロイアビリティも外的エンプロイアビリティもイギリスより低いことがわかりました。最後に、日本もイギリスも、内的エンプロイアビリティが外的エンプロイアビリティより高く、差もほぼ同じことが見出されました。わが国の組織が社員のエンプロイアビリティを高めるための施策(研修等)を行っていく上で、イギリスは一つの目標であることが示されたといえます。
多くの方々にお聴きいただき、また何人かの先生方に貴重なご質問およびコメントを頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
働く人の雇用やキャリアの問題に関心をお持ちの方は、是非、以下をお読み下さい。
日本労務学会第46回全国大会研究報告論集,pp.243-250