山本寛研究室 特集

キャリアプラトー

プラトーとは

キャリアプラトーのプラトー(plateau)は、直訳すると、「高原状態」となります。高原とは、日本の志賀高原も、チベットのチベット高原も標高が海抜数百~数千メートルあり、到達するまでは上に登る必要があります。しかし、到達してしまうと上は平らで、台形型をしています。このことから、プラトーは「停滞」を意味するようになりました。このような意味をもつプラトーは、働く人のキャリア以外にもダイエットや筋力トレーニングの効果など多くの分野で使われています。

キャリアプラトーとは

それでは、キャリアプラトーとはどのようなものでしょうか。

まずは、キャリアプラトーを直観的にわかりやすく図示した以下の図を見て下さい。縦軸はキャリアの到達度、またはキャリアの発達の程度を表します。キャリアには様々な意味がありますが、とりあえず働く人が履歴書に記入する勤務歴や転職歴などの「職業経歴」とします。そのなかで最もわかりやすいのが、昇進というキャリア(目標)でしょう。下から上にいくに従い、係長→課長→部長と管理職の階段を上がっていくからです。その他にも、起業というキャリア(目標)があります。「一円起業」という言葉があるくらい、昔より簡単にできるようになりましたが、資本金の準備、共同経営者の確保、中心となる技術やノウハウの取得など、やらねばならないことは数多くあります。それらが現在、どの程度準備できているかを到達度として測ることができます。

横軸はキャリアが始まってからの年数を示します。年齢、働き始めてからの年数や現在の会社での勤続年数などがそれにあたります。図では、Aのようにかなり高い所まで到達したが、現在止まってしまったケース、Bのように現在もずっと発達し続けているケース、Dのようにキャリア初期からほとんど低空飛行で発達していないケースなど様々な停滞状況が示されています。このなかで、B以外がキャリアの停滞を示していますが、特にAが典型的なプラトーを示しているといえます。

また、キャリアプラトーは、人生の特定の時期、とくに中年期のキャリアの危機として語られることがあります。たとえば、40歳代のミドル世代になると、社内における自分の位置づけ、つまり現在の自分の能力や、今後どこまで昇進できるかなどがある程度分かってくることが多いといわれます。そこで、これ以上自分が昇進できないと判断するだけでなく、新しい仕事に挑戦したり、そのための能力の開発に励むこともできないとなると、キャリアプラトーとなってしまうのです。このように、プラトーが働く人のキャリアに応用されて、キャリアプラトーと呼ばれるようになりました。

キャリア発達における「停滞」 (出所)田尾(1999)p.44より一部修正して引用。

図 キャリア発達における「停滞」

(出所)田尾(1999)p.44より一部修正して引用。

昇進におけるキャリアプラトー

キャリアプラトーがいわれるようになってきた当初から、キャリアとして昇進にスポットが当てられてきました。昇進の面からみたキャリアプラトーを、後述の仕事におけるキャリアプラトー(内容プラトー)と区別して、階層プラトーと呼びます。

階層プラトーは、二つの意味にとらえられます。第1は、○○課の課長などある特定の職位に注目し、「現在の職位以上に昇進する可能性が非常に低い職位」ととらえるものです。これは、職位を対象に、その職位にある人はそれより上位への昇進が困難であることを示します。たとえば、ある企業では社史編纂(さん)室長がその地位にあたるといいます。営業第一課長から社史編纂室長に異動すると、その後、上位の営業部長への昇進は非常に困難になるという場合です。

第2は、職位ではなく、個人に注目し、「従業員が、現在以上の職位に昇進する可能性が将来的に非常に低下すること」ととらえます。たとえば、営業第一課長から社史編纂室長に異動したAさんとBさんのその後のキャリアが異なる場合です。Aさんは営業部長に昇進したが、Bさんは昇進できなかった場合、Bさんの方がプラトー化したと考えられます。

階層プラトーを防ぐ最も良い方法は、課長や部長などの管理職位が増えることでしょう。そのためには、組織が拡大し、課や部などの部署が増える必要があります。しかし、民間企業で組織が拡大する前提として、売り上げや利益につながるような仕事が増える必要があります。つまり、企業が管理職位を増加させることは、経済や景気の影響も受けるため、常に可能なことではありません。また、多くの企業で社員の高齢化が進行し、以前であれば昇進できた従業員の昇進が遅れたことも階層プラトーにつながります。このように、階層プラトーは、個人では変えることのできない人口問題や、景気等経済的要因に大きく左右されます。

仕事におけるキャリアプラトー

職場でモチベーションの低下や成長実感のなさを訴える人々が多くみられます。具体的には、目の前の仕事に忙殺される、忙しいだけで仕事に喜びを見出せない、さらなる仕事を考える時間がないなどの状況です。特に、長期間同じ仕事を担当しその仕事をマスターしてしまうことなどから、新たな挑戦、わくわく感や学ぶべきことが欠けている状態を内容プラトーといい、仕事のルーティン化とも呼ばれます。仕事上の責任が与えられない、組織にとって重要な仕事を任されないという状況も同様です。内容プラトーは、昇進する、しないに関わらず、より広く仕事を行う上での単調感を反映し、モチベーションと関係が深いといえます。また、所属や部署の異動による仕事の変更が滞ることの影響を受けるため、どのような社員にも起こり得ます。昇進志向の高い人々にとって階層プラトーのマイナスの影響は大きいと考えられます。それに対し、昇進志向の低い専門職や自営業の人々にとって階層プラトーは無縁かもしれませんが、内容プラトーに陥る危険性は十分にあります。

しかし、長期間同じ仕事に従事して内容プラトー化する人もいれば、プラトー化せず求められる任務が高度化し、責任範囲が広がる場合もあります。また、仕事に新たな課題を見つけ、仕事の遂行方法を工夫することで、陥らない場合もあります。このように、内容プラトー化には個人差があります。社員が現在の仕事に挑戦性を感じ続けるには、常に仕事の遂行方法の高度化を図る、仕事への見方を変え変化を見つけて挑戦する、自分のキャリア目標と現在の仕事との関連性を明らかにするなどが求められます。

このように、昇進の停滞を示す階層プラトーと、仕事上の挑戦性の停滞を示す内容プラトーとは区別して扱う必要があります。最近では、 キャリアプラトーは以上の二つでとらえることが多くなっています。

ダブルプラトー

階層プラトーと内容プラトーは関連があることがわかってきました。仕事で停滞したのをきっかけに昇進が停滞する、昇進が停滞したのをきっかけに仕事が停滞するなどの状況です。このように、階層プラトーと内容プラトーの両方に陥っている人またはその状態をダブルプラトーといいます。諸外国の調査では、階層プラトー、内容プラトーの一つに陥った状態より、二つが重なった状態の方が働く人へのマイナスの影響が大きいこともわかってきました。

キャリアプラトーに関する著書

『昇進の研究[増補改訂版]-キャリア・プラトー現象の観点から』(創成社)

今、自分のキャリアってどんな感じだろう、社内で評価されているんだろうか・・・。こういったことを、1年前の自分と比べて、また、入社が同期の社員と比べて考えたことのない人の方が少ないでしょう。普段は忙しくて考える暇がなくても、異動や転職などの節目の際に考えることが多いのではないでしょうか? 本書はそうしたキャリアの節目のうち、特に昇進をテーマにしています。組織でのキャリアの発達を考えたとき、昇進は重要な位置づけを占めているからです。しかし、働く人々のキャリアは継続的に発達し続けているというより、紆余曲折があり、停滞し、場合によっては下降することもあるというのが実態ではないでしょうか? そこで、本書では、キャリアを停滞(ネガティブ)の面からとらえ、キャリア・プラトー(停滞)現象に注目しました。これは、所属組織で将来の昇進の可能性が低下することを示します。そして、キャリア・プラトー現象の要因や、働く人への影響、さらにそれに対処するための組織の人的資源管理について検討しました。部分的ですが、分析結果を示すと以下のようになります。

第1に、キャリア・プラトー現象の要因の観点からみると、促進する要因と無関係な要因とがみられました。例えば、年齢が高いこと、勤続年数が長いこと、女性であることはプラトー状態を促進していました。以上から、女性の管理職への登用が求められている現代、昇進者における女性の比率を一定以上に割り当てるなどの積極的な施策が求められます。

第2に、働く人への影響という観点からは、自分がキャリア・プラトー状態にあるという認識は、キャリアへの満足感、所属組織へのコミットメントなど多くの意識の低さや転職意思の高さなどに影響していました。それに対し、客観的に把握できるプラトー状態、つまり現在の職位での在任年数が長期化していることは、組織へのコミットメントの低さ及び転職意思の高さにだけ影響していました。つまり、プラトー状態は特に、所属組織への意識にマイナスに働くことが明らかにされ、定着(リテンション)に悪影響を与える可能性が指摘されました。

第3に、人的資源管理の観点からは、プラトー状態と関係する施策としない施策があることが示されました。特に、どちらかというと社員自身が自発的に参加する制度(早期退職優遇制)や、昇進試験のように客観的に結果が明白になる制度の方がプラトー状態を促進する可能性が指摘されました。

本書は、若手や中堅社員の方々だけでなく、部下のモチベーション低下に悩む管理職の皆様など、多くの方々に読んでもらいたいと思います。なお、実証分析の統計数字などが読みにくいと思われる方は、「実証分析」と書かれている節を読み飛ばして下さい。

キャリアプラトーに関する学術論文

「看護職のキャリア目標の設定とキャリア・プラトー化との関係―内容的プラトー化との比較の観点から」『産業・組織心理学研究』(産業・組織心理学会)第25巻第2号pp.147-159(共著)<査読済み>

働く人のキャリア発達の停滞、つまりキャリア・プラトー(停滞)現象は、昇進の停滞、つまり将来の昇進可能性の低下だけではありません。仕事で成長しているという実感がない、モチベーションが低下するなど、仕事における挑戦性の停滞も重要なキャリア発達の停滞です。これは、長期間同じ仕事を続けることなどによってマンネリ化し、自分の仕事にワクワク感を感じられない、様々な能力を使えるようなチャレンジングな仕事をしていない状態とも言い換えられます。本論文では、キャリア・プラトー現象を、昇進と仕事という2つの側面でとらえました。ところで、将来のキャリア上の目標を決めることは本人がキャリア・プラトー現象に対処する有効な方策と考えられます。本論文では、少子高齢化に伴い、その重要性がますます高まっている看護職を対象にして、キャリア目標の設定が昇進の停滞と仕事の停滞とにどのような影響を及ぼすのかを比較検討しました。

臨床経験3年以上の看護師を対象としたアンケート調査の結果、キャリア目標を決めている人ほど、昇進可能性の低下や仕事の挑戦性の低下に陥りにくいことがわかりました。また、高いキャリア目標を決めている人ほど、昇進可能性の低下に陥りにくいことも明らかになりました。このことから、看護職が積極的にキャリア目標を決めていくには、看護職という職業をより魅力的なものと感じ、将来にわたって長く継続していく意欲が必要となります。そのため多くの病院等の施設では、看護職のワーク・ライフ・バランスを高めることを含めた職場環境の改善に積極的に取り組む必要があるといえます。

専門職や看護職のキャリア発達や働くこと全般に興味をおもちの方は、是非、以下をお読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、問題と考察の部分を中心にお読み下さい。

本文へ→nurses’ career plateauing

「看護師のキャリア・プラトー化に影響を及ぼす要因-A県内の病院で働く看護師を対象に-」『第41回日本看護学会論文集-看護管理-』,pp.25-28(共著)<査読済み>

看護職は、少子高齢化の進行に伴い、その重要性がますます高まっている専門職の一つです。看護職に関わらず、特に専門職は、業務分野における専門分化が進行し、高い専門性獲得という形での不断のキャリア発達が求められています。医療の高度化が日進月歩の勢いで進む看護職では言うまでもないことでしょう。以上の理由から、本論文では、看護職のキャリア発達の問題を扱います。しかし、働く人々のキャリアは継続的に発達し続けているというより、紆余曲折があり、停滞し、場合によっては下降することもあるというのが実態ではないでしょうか? そこで本論文では、看護職のキャリア発達を、その停滞、すなわちキャリア・プラトー(停滞)現象という観点からとらえました。そして、キャリア・プラトー現象を、現在以上の職位に昇進する可能性が非常に低い状態ととらえ、それに影響を及ぼす要因を検討しました。

臨床経験3年以上の看護師を対象としたアンケート調査の結果、以下の点が明らかにされました。客観的なプラトー状態にあっても主観的にはプラトーでない状態(ノン・プラトー)にあることへ影響する組織的な要因は、常勤の看護師や大学卒など高学歴の看護師の数が多いことでした。できるだけ手篤く常勤の看護師や高学歴看護師の配置に努めることが主観的なプラトー化の防止につながる可能性が示されました。個人的な要因としては、キャリア・プラトー状態にある看護師の方が、年齢が高く、看護師としての経験年数が長く、経験した病院数が多いことから、中堅以上の看護師がプラトーに陥らないための対策を講じる必要が指摘されました。多くの病院で看護師長等の管理職位が限られている環境下では昇進は望みにくいため、看護師が看護職であることへの誇りを持てるような方策や自律的なキャリアの開発を支援する仕組みづくりなどの推進が望まれます。

専門職や看護師のキャリア発達や働くこと一般の問題に興味をおもちの方は、是非お読み下さい(松下由美子・田中彰子・吉田文子・杉本君代・雨宮久子各氏との共同論文)。

「組織従業員のキャリア・プラトー現象と昇進の原因帰属―原因帰属理論の観点から」『経営行動科学』(経営行動科学学会)第16巻第1号 pp.1-14<査読済み>

働く人のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞は、業績の低下や転職につながるのでしょうか。本論文では、モチベーションに関する理論の1つである原因帰属理論に基づいて分析しました。原因帰属理論とは、人間はあるでき事(例 昇進)が発生したとき、それが生じた原因を考える動物であることを前提とします。そして、昇進が起こる原因は運によるのか、能力が高いからか、努力したからかなど、どのように考えるかがモチベーションに影響すると考える理論です。

大企業の課長を対象としたアンケート調査の結果、以下のことがわかりました。第1に、昇進が停滞していない人ほど、昇進は能力の程度など自分の内的な要因や(上司など)普段接している人からの助力など、比較的変化しにくい安定的な要因で起こるものだと考えていました。人間は昇進が停滞していないという自分にとって好ましい状態を維持しようとするため、それを安定した要因によると考える傾向が推測されます。

また、昇進が停滞していても、昇進は運に左右されるとする傾向が強く、逆に普段接していない人からの不意の助力に影響されると考える傾向が弱い方が、業績や転職等へのマイナスの影響が低いことが示されました。同じく、昇進が停滞していても、昇進はその困難度によって決まると考える傾向が弱い方が、業績等を向上させることが示されました。

このように、昇進の原因をどのように考えるかは、昇進の停滞と業績等との関係に影響していることが明らかにされました。このことから、人事施策による社員の原因帰属への働きかけが、業績向上や転職防止などの効果をあげる可能性が示されたといえます。具体的には、昇進における敗者復活戦を定期的に実施することは、普段の仕事における継続的な努力が昇進につながるという社員の認識を高めると考えられます。

組織における社員のキャリア発達や昇進の問題に関心のある方は、是非、以下をお読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、問題と考察の部分を中心にお読み下さい。

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「キャリア・プラトー現象と昇進に対する期待―期待理論の観点から」『青山経営論集』第36巻第3号 pp.1-21

働く人のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞は、業績の低下や転職につながるのでしょうか。本論文では、モチベーションに関する理論の1つである期待理論に基づいて分析しました。期待理論とは、働く人は努力することによって、特定の結果(昇進、昇給)をもたらす確率が高いと期待するほど、また、そのような結果が自分にとって望ましいものであると認識するほど、努力しようとすると考える理論です。

企業の課長を対象としたアンケート調査の結果、昇進が停滞していると思うことは、努力すれば昇進できるという期待や、努力すれば業績が向上するという期待が低いこと、さらには、業績が向上すれば昇進できるという期待が低いことに影響していました。しかし、現在の職位での在任期間が長いなど客観的に昇進が停滞していることには、明確な影響はみられませんでした。この結果から、企業や上司が社員の昇進の停滞を扱う場合は、在任期間など把握可能な客観的側面だけでなく本人の主観的な認識も考える必要があることが示されたといえます。

働く人々の昇進やモチベーションの問題に関心がある方は是非、以下をお読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、問題と考察の部分を中心にお読み下さい。

本文へ→キャリア・プラトー現象と昇進に対する期待―期待理論の観点から.pdf

「昇進の目標設定とキャリア・プラトー現象との関係」『産業・組織心理学研究』(産業・組織心理学会)第12巻第2号 pp.89-98<査読済み>

働く人のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞は、業績の低下や転職につながるのでしょうか。本論文では、モチベーションに関する理論の一つである目標設定理論に基づいて分析しました。目標設定理論では、個人が仕事上の目標を設定するか、周囲から目標を提示することが、モチベーションを高め、高い業績を達成することにつながると考えます。つまり、働く人自身が自分の昇進目標を決めることによって自身への期待が高まり、さらには昇進可能性の認識が高まることが予想されます。

大企業の課長を対象としたアンケート調査によって、昇進目標の設定と昇進の停滞との関係を分析した結果、以下のことがわかりました。社長など将来の昇進目標(職位)が高いほど、また決めた昇進目標に対する納得度が高いほど、さらに途中段階の目標を決めているほど、昇進が停滞していないことが明らかにされました。また、昇進の停滞は昇進の目標とモチベーションや業績との関係に影響していました。例えば、昇進が停滞していない人は、段階的に昇進目標を設定しているほどモチベーションが高いのに対して、昇進が停滞している人は段階的に昇進目標を設定しているほどモチベーションが低いという逆の関係がみられました。

昇進など組織におけるキャリア発達に関心がある方は、是非お読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、問題と考察の部分を中心にお読み下さい。

「組織の配置管理と管理職のキャリア・プラトー現象との関係-キャリア発達の観点から」『組織科学』(組織学会)第33巻第1号 pp.80-96<査読済み>

企業などの組織の人的資源管理と働く人のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞とはどのような関係にあるのでしょうか。昇進の停滞が、モチベーションや業績の低下、転職に結びつきやすいとすれば、組織としてもできるだけそれを防止する必要があるからです。本論文では、多様な人的資源管理のなかでも社員の営業部や経理部などの部署への配属に関わる配置管理を取り上げ、昇進の停滞との関係を分析しました。昇進の停滞は管理職ポストを増加させることによって緩和されると考えられますが、業績が向上し続けている組織でないとそれは困難であり、他の施策を考える必要があるからです。

大企業10社および所属する課長237名に対するアンケート調査を行った結果、課長の一つの課での(平均)配置期間をあまり短すぎずまた長すぎない期間(具体的には4-5年)に設定している組織では、課長の昇進の停滞が進んでいないことが示されました。しかし、現在配属されている課が、組織のなかでのエリート・コースであるかどうかと昇進の停滞との関連はみられませんでした。また、現在の課での配属期間が長い課長や現在の課がエリート・コースではない課長の場合、昇進が停滞しているほど仕事へのコミットメントが低く転職意思が高い傾向がみられました。昇進の停滞やそれによる影響を考える上で配置管理の役割がある程度明らかにされたといえます。

組織における社員のキャリア発達やそれと組織の人的資源管理との関係に関心がある方は、是非お読み下さい。なお、統計数値が読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、問題と考察の部分を中心にお読み下さい。

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「企業文化と従業員のキャリア・プラトー現象との関係について」『日本労務学会誌』第1巻第2号 pp.35-44<査読済み>

組織によって、社員のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞はどのように異なるのでしょうか。本論文は、組織の違いとして企業文化に注目しました。企業文化とは、社風や組織風土と類似しており、社員に共有された価値、規範、行動様式などを指します。また、企業文化は昇進の停滞と関係の深い早期退職優遇制度など個々の人的資源管理施策の背後にある企業全体の方針に影響すると考えられます。

本論文では、企業文化を二つの観点からとらえました。第1が表層レベルの文化で、人事担当者に聞いた企業の雇用や昇進に関する慣行です。第2が深層レベルの文化で、社員自身に尋ねた所属組織の管理職選抜システムに対する認識です。表層レベルの文化は、終身雇用・早期エリート選抜型、終身雇用・競争継続型などのタイプに分類され、深層レベルの文化は、早期エリート選抜型、同期横並び型などに分類されました。

大企業の課長を対象としたアンケート調査の結果、表層レベルの雇用・昇進慣行上のタイプ別に課長の昇進可能性を比較しましたが、差はみられませんでした。つまり、昇進の停滞は雇用・昇進慣行上のタイプの違いに関わらず、どの組織にも同様にみられる現象であることが示されました。次に、深層レベルの管理職選抜システムに対する認識別に課長の昇進可能性を比較した結果、自社が早期エリート選抜型であるとする課長は、同期横並び昇進型または競争継続型とする課長より、現職位での在任期間が長い、つまり客観的に昇進が停滞していることがわかりました。

以上から、社員の認識による深層レベルの企業文化が昇進の停滞に影響していることが明らかになりました。個別の人事施策と昇進の停滞との関係を考えるにあたっては、施策が社員の管理職選抜システムの認識をいわばフィルターとして通して昇進の停滞に影響するのではないかという可能性が示されました。

企業の人事の方々や組織でのキャリア発達に関心がある方々は、是非お読み下さい。なお、統計数値が読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、1と3の部分を中心にお読み下さい。

「組織の人的資源管理施策と管理職のキャリア・プラトー現象との関係-大企業の課長職を対象として」『日本経営学会誌』第4号 pp.28-38<査読済み>

企業など組織の人的資源管理によって、社員のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞はどのように異なるのでしょうか。昇進の停滞は、昇進に関する現象である以上、昇進に関する個々の人的資源管理施策と密接に関係しています。本論文は、人的資源管理上の制度や慣習の昇進の停滞への影響を検討することで、その発生をできるだけ抑えるような施策の立案に役立てることを目的としました。

大企業及び所属する課長を対象としたアンケート調査の結果、以下のことがわかりました。まず、退職準備プログラム、すなわち定年後の生活設計、健康管理、生きがいなど定年後の生活を充実したものとするための研修がなく、また、逆転人事、つまり上の年次の者が、昇進格差が拡大したために下の年次の者に追い越されるような慣習がある企業の課長の方が昇進可能性の認識が低いことがわかりました。しかし、それ以外の制度や慣習では差がみられませんでした。昇進に関する個々の人的資源管理制度や慣習は昇進可能性の認識とはあまり関係がないことが明らかにされました。

次に、客観的な昇進の停滞を示す現職位での在任期間の長さについては、以下の点が明らかにされました。まず、早期退職優遇制度、すなわち定年前に退職した場合、退職金を定年退職と同様にまたは加算金を上積みする制度があり、また、昇進試験、昇格試験があり、課長昇進において実際に昇進試験の結果を重視している組織の課長は、課長としての現職位在任期間が長いことがわかりました。

以上の結果から、昇進に関係する人的資源管理施策のうち、プラトー現象と関係するものと関係しないものがあることが示されました。全体としては、従業員自身が自発的に参加する制度(早期退職優遇制)や、試験のように客観的に結果が明白になる制度の方がプラトー現象と関係が深い傾向がみられました。

企業の人事部の方々や組織でのキャリア発達に関心がある方々は是非、以下をお読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、1、2、4の部分を中心にお読み下さい。

本文へ→組織の人的資源管理施策と管理職のキャリア・プラトー現象との関係-大企業の課長職を対象として.pdf

「組織の従業員におけるキャリア・プラトーの研究-職務特性理論等の観点から」『日本経営学会誌』創刊号 pp.35-47<査読済み>

社員のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞は、どのような要因の影響をうけ、またどのような影響を社員に及ぼすのでしょうか。本論文では昇進の停滞の要因として、本人の職位と働くことに対する価値観を、昇進の停滞の影響として本人の仕事(の特徴)とキャリア意識を取り上げました。

民間企業の正社員を対象としたアンケート調査の結果、以下のことがわかりました。まず、職位では、課長職で昇進が停滞していない社員が停滞している社員より多いことがわかりました。次に、重視する価値観では、停滞している社員もそうでない社員も給料・賃金の比率が最も高く、次いで仕事上のやりがい(達成感)、仕事に対する責任、職場の楽しい人間関係等の順でした。社員が重視する価値観からみると、昇進の停滞の違いはみられませんでした。

昇進の停滞の仕事への影響については、停滞した社員は、そうでない社員より自分の多様なスキルを使えるかどうかや重要性の高さなどからみた職務充実度が低いと認識していました。また、キャリア意識への影響では、停滞した社員は、停滞していない社員より転職意思の高さ、仕事へのコミットメントやこれまでのキャリアへの満足感の低さがみられました。これから特に、停滞した社員に対して権限を委譲すること等によって職務の充実度を高める必要性が指摘されました。人的資源管理の観点からは、管理職への昇進以外に社員の高度な知識・スキル・経験などを評価する専門職制度の充実化などが、停滞した社員に有効である可能性が示されました。

組織におけるキャリアの発達の問題に関心をお持ちの方は是非、以下をお読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばしてお読み下さい。

本文へ→組織の従業員におけるキャリア・プラトーの研究-職務特性理論等の観点から.pdf

「キャリア・プラトー状態の従業員の検討-キャリア意識やキャリア上の決定・行動等の観点から」『産業・組織心理学研究』(産業・組織心理学会)第10巻第1号 pp.41-57<査読済み>

社員のキャリア発達の停滞を示すキャリア・プラトー(停滞)現象、特に、昇進の停滞とはどのような現象なのでしょうか。本論文では職位や職種などの属性的要因、組織に対するコミットメントなどの職務意識、組織における上昇志向的な行動などのキャリア上の決定・行動について、昇進が停滞した社員と停滞していない社員との違いを検討しました。さらに、類似した現象とどのように異なるかを検討するため、主に担当している仕事における停滞(担当期間が長いこと)及び社内の部署への配属における停滞(配属期間が長いこと)との違いを検討しました。

民間企業に勤務する正社員を対象としたアンケート調査の結果から、以下のことがわかりました。職位では、管理職ほど昇進が停滞していないことが示されました。職種では、総務、企画・調査であるほど昇進が停滞していない社員の比率が停滞している社員の比率より高い傾向がみられました。また、組織に対するコミットメントや自分のキャリア目標へのコミットメントは、昇進が停滞している社員が停滞していない社員より低いことなどが明らかにされました。さらに、仕事における停滞と配属における停滞は類似しており、昇進における停滞とは違った現象であることも明らかにされました。対象者の組織に対するコミットメントを考えた昇進管理や、社員自身のキャリア目標の設定やその達成状況等を把握した上での人的資源管理の推進などが重要であることが示されました。

働く人のキャリア発達やそれに対する組織の援助の問題に関心がある方は、是非お読み下さい。なお、統計数値などが読みにくいと思われる方は、それらを飛ばして、Ⅰ、Ⅱ、Ⅳの部分を中心にお読み下さい。

キャリアプラトーまとめ

働く人は誰しも自分のキャリアの継続的な発達を望むでしょう。しかし、キャリアプラトーは努力し続けても発生し、多くの人にとって不可避な状態です。そのため、働く人は、自分のキャリアがずっと右肩上がりで上昇し続けるという期待をもつことは難しいですが、同時にプラトーをむやみに恐れる必要もないのです。プラトーになること自体にはもともと否定的な意味は含まれていないからです。さらに、年齢に関わらず、仕事に関する知識やスキルを磨き、高度な専門知識や他の人のもてないような独創的なスキルを身につける努力を続けることなどによって、プラトー化を遅らせることは可能です。そのため、組織としては、キャリアプラトー化自体が問題ではなく、それが社員や部下にマイナスに作用し、業績の低下や退職に結びつくことを防いでいく必要があります。そのための専門能力育成のための研修やカウンセリングなどのサポートを心がけるべきでしょう。

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